機械学習と時系列予測

2020年9月24日 / 副主任研究員 鈴木 孝義

新型コロナウイルスの猛威が続いている。4月に発令された緊急事態宣言により、不要不急の移動の制限や商業施設・飲食店等に対する休業要請が出され、私たちの生活は一変した。当然のことながら、新型コロナウイルスは、金融マーケットにも大きな衝撃を与え、世界的な株価の下落を招き、3月には日経平均株価が16,000円台、為替相場(ドル/円)が101円台を付けるなどリスク回避の動きが鮮明となった。その後、世界的な財政・金融政策の効果、米国のGAFAMをはじめとしたIT企業の好調な決算、コロナワクチン開発期待などもあり、日経平均株価は再び年初来高値圏で推移するなど、持ち直しの動きが続いている。一方、新型コロナウイルスの第二波ともいえる世界的な新規感染者数の増加、安倍首相の辞任に伴う国内政治の行方など、先行き不透明な状況は未だ続いている。

このような状況において、先が見通しにくい金融マーケットだからこそ、近年注目を浴びている機械学習を用いて、日経平均株価の予測をしてみたいと思う。ここでは、Facebook社が開発をした時系列予測のオープンソースソフトウエア「Prophet」を用いる。開発環境はGoogle Colaboratoryを使用した。2015年9月1日~2020年8月31日までの日経平均株価のデータから、今後1年間の日経平均株価の予測を行った。予測モデルの精度向上のための調整は行っておらず、初期設定で分析をした。予測結果は以下のとおりである。黒の点は実データ、青色のラインは予測線、水色は予測の誤差範囲を示している。

 

 

Prophetによると、日経平均株価は、2020年は12月にかけては上昇、2020年末から下落と予測している。

参考までに、Prophetは周期性の分析をすることができ、以下は日経平均株価の1年間の値動きの周期性を表している。

 

 

Prophetによると、年初から春先にかけて下落し、秋から年末にかけて、上昇する傾向のようだ。株価の周期性を表す相場の格言として、「Sell in May and go away, and come on back on St. Leger’s Day.(5月に株を売れ、そして、競馬のセントレジャーが開催される9月第2土曜日まで戻ってくるな。)」がある。格言のとおり、5月に株を売ることはタイミングが良いとは言えないようだ。

 

時系列分析は、トレンドや季節性があると、回帰分析では精度の低いモデルになりがちである。しかしながらProphetを使うことで、簡単に、ある程度精度の高いモデルを作成できることが確認できたといえる。

 

(データ出所)

yahoo! Finance(https://finance.yahoo.com/quote/%5EN225/history?ltr=1

 

(参考)

Prophet(https://facebook.github.io/prophet/