商店街における外国人の存在とは

2018年10月16日 / 研究員 三浦 拓実

 2011年以降、日本国内における外国人観光客数(インバウンド)は右肩上がりで増加している。最近の外国人観光客の動向をみると、日本人の“ふつうの暮らし”を体験することに関心があるようで、観光地でもない商店街に足を運ぶようになってきた。そのような背景から、多くの商店街がインバウンド需要の獲得に取り組み始めていることもあり、商店街においては“顧客”としての外国人が注目されがちであるが、ここでは異なる視座から商店街における外国人の存在を考察したい。

 中小企業庁が3年に1回の頻度で実施している、全国の商店街を対象にした「商店街実態調査」によると、商店街が抱える最も大きな問題は「経営者の高齢化による後継者問題」(下記図表参照)、すなわち商店街の店主の高齢化や後継者難に悩みを抱えているのだ。東急総合研究所が昨年に東京・神奈川で独自に行った商店街調査においても、全国調査と同様の結果が出たことから、これは地方の商店街に限った話ではない。

                             【図表】 商店街の抱える問題(複数回答:3つまで)

出典:中小企業庁「平成27年度 商店街実態調査報告書(概要版)」より抜粋  http://www.chusho.meti.go.jp/shogyo/shogyo/2016/160322shoutengaiA.pdf

 この問題を背景に、多くの商店街では空き店舗になるケースと、貸店舗やマンションになるケースがみられる。全国的には、空き店舗が多く連なることで“シャッター商店街”が目につきやすく、特に問題視されている。一方、東京・神奈川の商店街は閉店後も店舗の借り手が多くいることから、地方と比較して貸店舗が増加する傾向にある。

 貸店舗が増加する中で注意しなければならないのは、外国人が店主のお店だ。一般的に、商店街には店主やオーナーによって構成される商店会という組織があり、商店会は入会者の会費を基盤に定期イベントの実施、商店街における各種設備の整備等を行っている。ところが、外国人店主はこの商店会の存在意義がわからず、入会しないか、一時的に入会したとしても会費の徴収時だけ急に日本語が分からない素振りをする外国人店主もいるそうだ。

 私の故郷である群馬県大泉町の商店街も高齢化や後継者不足が深刻化する中で、十数年前に近隣に大型商業施設が出店したことで個人店の売上減は加速し、多くの店舗が閉店・廃業となり、貸店舗となった。その後、この大泉町は日本で一番外国人の人口比率が高いこともあって、貸店舗となった店には外国人が店主のお店が徐々に増えていった。その結果、「外国人による外国人のためのお店」の多数の出現により、日本人と外国人のコミュニティが分断されてしまった。さらに、特定の外国人のみのコミュニティの形成が外国人を呼び込むこととなり、地域の日本人住民と外国人の共生にかかわる社会問題が顕在化し、自治体運営にまで影響を及ぼしている。

 現在、多くの職場で人手不足が問題になっているが、今後はさらに少子化・高齢化、それらに起因する人口減少が加速し、日本全体で労働力不足が深刻化することは確実視されている。労働力不足を補うために、様々な場所で外国人労働者の受け入れが進むことは容易に想像できるが、多くの商店街においては「外国人のお店」の受け入れ体制が整っているとは言い難い。街の個性であり、地域の資産である商店街を存続させるためには、共生の観点から外国人の存在を再考する必要があるのではないだろうか。