育児記録データを活用した0歳前半の育児

2024年5月27日 / 研究員 杉田 渓

 昨年9月、息子が誕生した。それに伴い、昨年9月から本年3月末までの7か月間、育児休業(以下、育休)を取得することとなった。まずは7か月もの間育児に専念することを受け入れてくれた職場に、この場を借りて改めて御礼申し上げたい。
 本稿ではその育休期間中に育児に活用した、授乳や睡眠、排せつなど、乳児の活動を記録した育児記録データの一部を紹介する。
 乳児の活動を記録する有力な手段として、”ぴよログ※1”というアプリがある。このアプリでは、乳児の授乳や睡眠、排せつなどについて時刻と合わせて記録できる。実際の記録画面は図1のような形となっている。

  図1 ぴよログにおける実際の記録画面
   

 この記録は夫婦で共有することができ、片方が外出しているときもアプリを見ることで状況を把握できる。これは育休から復帰した今においても大変役に立っている。現代においては、育児においてもアプリの活用は欠かせない。
 当初は息子の様子を正確に把握することで、病気などの際に医師に説明しやすいということで記録しようと決めたものであったが、息子が生まれて半月ほど経過したとき、この育児記録をうまく定量データ化して、育児に有効活用できないだろうかという思いが浮かんだ。
 しかし、アプリからエクスポートできるデータは構造化されておらず、そのままでは活用が難しい。そこで、息子が眠っているわずかな時間を使い、エクスポートファイルを分析しやすい表形式に整形するプログラムをPythonで書くこととした。プログラムを書く際には、ChatGPTが大いに助けとなった。睡眠不足の頭で書いていたため何度もエラーに悩まされながらもデータの整形に成功し、データ活用の素地を整えた。そのデータを活用した結果の一部を紹介する。

 乳児の育児において、親として最も関心が強いのは睡眠ではないかと思う。我が家においても例外では無く、まずは睡眠を可視化してみようと試みた。図2はその結果であり、息子が退院した後、10日ごとに日々の睡眠を可視化したものである。縦軸が生後日数、横軸が時刻となっており、青いバーで示されているところが睡眠中であることを示す。

  図2 出生後日数ごとの睡眠時間帯
   

 こうしてみると、生後30日ころまで昼も夜も関係なく寝ていたが、その後徐々に昼夜の区別がついてきていることが分かる。加えて、生後170日以降は日中の睡眠が減少し、その分18時以降の睡眠が増えていることも分かる。すなわち、徐々に睡眠パターンが大人のそれに近づくよう変化してきていることが見て取れる。
 睡眠パターンのほかに、当然日ごとの合計睡眠時間も気になってくる。その推移を示したグラフが図3である。オレンジ色の線は前7日間平均を示しており、長期トレンドを把握する目的で算出したものである。

  図3 1日あたり睡眠時間推移
   

 睡眠パターンは徐々に変化していたものの、睡眠時間はこの半年間、13時間~14時間で推移しており、あまり変化していないことが分かる。育児書などによると生後半年で数時間ほど短くなるらしいのだが、息子はそうではなかったようだ。
 またグラフを短期的によく見ると、周期的に睡眠時間が増減していることが分かる。親としては息子の睡眠時間が短い日があると身体に異常があるのかと心配にもなるが、こうしてみると単に周期の一部に過ぎないことが分かり安心した。

 一方気になる点もあった。息子が生後1か月を経過しようかという頃、残暑がまだ厳しく、眠ってもらうために冷房の温度をこまめに調節したほうが良いのだろうかと気をもんでいた。
 そこでベビーベッドに設置したスマート温湿度計を活用し1分単位の温度データを出力し、育児記録データと合わせることで室温と入眠の関係について検証を試みた。図4は1週間分の室温変化グラフ(緑線)に息子の入眠タイミング(赤点)のデータを付加したものである。

  図4 室温変化と入眠タイミング
   

 グラフを見ると、気温が多少高いときにおいても入眠していることが分かる。すなわち、多少の室温差は入眠に影響しないと考えられる。湿度についても同様の結果であった。そのおかげで、室温が30度以下であれば、眠らない場合は温度や湿度よりもその他の要因(空腹やオムツが気持ち悪い等)を先に疑うべきだという方針を立てることができた。

 睡眠の話をここまでしてきたが、睡眠以外においても息子の成長を感じたことがあった。次の図5は、オムツを変えるときに排便を確認した回数(1日あたり)の推移を示したものである。オレンジ色の線は図3と同じく、前7日平均を示している。

  図5 1日あたり排便確認回数の推移
   

 定期的にオムツを確認しているが、そのうちの排便確認回数は生後90日頃まで減り続け、その後は1日あたり平均1回~2回程度で推移していることが分かる。こうしてみると生後90日間、体の成長に伴い腸も成長し、便を体内に留めておけるようになったと推測できる。見た目はもちろんのこと内臓もまた成長していることを感じ、感慨深くなった。

 最後に、育児記録データを使ってみた所感を述べておきたい。改めて、育児記録のデータは、息子の成長の可視化や悩みの解決にとても役に立ったと感じる。それだけでなく、他にも有用性を感じた点がある。育児中はどうしても客観的な視点を失いがちになるが、この育児記録データは一定の客観性をもたらしてくれたため、妻と私のメンタルケアの一助にもなったと感じている。
 育児において、最終的には記録より記憶が大事になるのだろうと思うが、その渦中では時として記憶より記録が役立つこともあると感じる。また、息子の成長を写真だけでなく、データとしても感じられたことも感慨深い。

 一方で、心拍数や体温などのバイタルデータを取得しているわけではないため、得られる知見には限界がある。また、記録の際には正確を期すように心がけているが、それでも多少の誤差が生じている。データを用いる際にはその特性を十分に理解し、可能であることと、不可能であることを把握することが大事であると改めて感じた。
 また、日々の行動をすべて記録するということも、慣れるまでは大変であった。データ活用以前にそもそもデータを作ることが大変であるということを、身をもって実感した。

 知り合いの子の話と息子の様子を比べると、人間は生まれた瞬間から個性があると感じる。もしその個性がデータとしても表れてくるのであれば非常に面白い。できれば他の赤ちゃんのデータも見て、比べてみたいと思う。

※1:『ぴよログ』(https://www.piyolog.com/)