今年も残すところ、あとわずか。街を歩くと、色とりどりのイルミネーションがともり、クリスマスムードが高まっている。家族や友人と過ごすこの特別な季節、プレゼント選びに頭を悩ませる人も多いだろう。特に子どもたちへのプレゼントとして人気の高い玩具は、毎年新しいトレンドが生まれ、注目を集めている。
　日本玩具協会によると、2023年度の日本国内玩具市場規模は希望小売価格ベースで1兆193億円と初めて１兆円を超え、2019年度以降では4年連続で拡大している。

　　図１．日本国内の玩具市場及び15歳未満人口の推移（2003~2023年）
　　　　　（左軸単位：百万、右軸単位：千人）

　　　　（出所）一般社団法人日本玩具協会

　子ども向けのイメージが強い玩具だが、少子化が進む中でなぜ市場が拡大しているのだろう。その要因を探るうえで、2023年度の玩具各商品カテゴリーの市場規模をランキング形式にしてみた。

　　図２．2023年度国内玩具商品カテゴリー別市場規模

　　　　（出所）一般社団法人日本玩具協会のデータをもとに東急総合研究所作成

　第1位は「ポケモンカードゲーム」「ONE PIECEカードゲーム」「遊戯王OCG」に代表されるカードゲーム・トレーディングカードで、その市場規模は2,774億円にのぼる。第2位はベビーカーやチャイルドシート、三輪車などの需要が高まった知育・教育玩具だ。そして、第３位は「ガンプラ（ガンダムのプラモデル）」や漫画・アニメのキャラクターを扱ったフィギュアが好調だったホビーとなっている。一方、拡大が目立った商品カテゴリーをみると、ハイテク系トレンドトイが前年度比+21.5％の1,285憶円と目立っている。たまごっちの新機種「Tamagotchi Uni」や「ぷにるんず」シリーズがヒットしたという。
　玩具市場が拡大している背景としては、「キダルト」と呼ばれる、子ども心を持ち続ける大人たちが増えており、そうした大人をターゲットにした商品が登場していることが挙げられる。前述のカードゲーム・トレーディングカードの人気は大人需要を取り込んだものといえる。プラモデルやフィギュアなどかつて子ども時代に親しんだ玩具が大人向けにデザインされている。大人向けとあって、商品によっては高価格帯で販売されており、限定版のキャラクターフィギュアは1体100万円を超えるものもあるという。
　大人も魅了している玩具として身近なところで見かける機会が増えたのは、小型の自動販売機に硬貨を入れ、回転式レバーを回すと出てくるカプセル入りの玩具「カプセルトイ」だ。以前は駄菓子屋、おもちゃ屋の軒先に置かれているイメージが強かったが、近年ではカプセルトイ専門店が登場している。カプセルトイ専門店を運営しているハピネットの2024年調査によると、20代、30代女性の2人に1人が大人になってからカプセルトイを購入したことがあると回答しており、大人需要を裏付けている。

　　図３．大人になってからカプセルトイの購入経験がある人の割合

　　　（出所）株式会社ハピネット「カプセルトイの大人需要実態調査」

　このような大人需要の拡大を背景にカプセルトイ専門店が商業施設のテナントとして出店することが増えている。2024年3月、さっぽろ東急百貨店にオープンした北海道内最大級のカプセルトイ専門店では1000台以上のカプセルトイ販売機が並び、従来の百貨店とは異なる顧客層の獲得に一役買っているようだ。2024年12月にはみなとみらい東急スクエアにもカプセルトイ専門店がオープンするなど全国各地で出店ラッシュが続いている。
　このように、少子化という課題に直面しながらも、「キダルト」というターゲット層の取り込みで拡大が続く玩具市場。今後も新しいトレンドが生まれることが予想される。2025年はどのような玩具が登場するか、今から楽しみである。

（参考）
　一般社団法人日本玩具協会「玩具市場規模データ」
　https://www.toys.or.jp/toukei_siryou_data.html

　株式会社ハピネット「カプセルトイの大人需要実態調査」
　https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001614.000031422.html

　株式会社バンダイナムコホールディングス
　https://www.bandainamco.co.jp/

　株式会社タカラトミー
　https://www.takaratomy.co.jp/

　北海道文化放送株式会社
　「札幌のデパートに“カプセルトイ”1000台以上！ 道内最大級の専門店誕生…どれを選ぶ？大人から子供まで魅了 外国人観光客にも人気…新たな客層開拓に」
　https://www.uhb.jp/news/single.html?id=41148