【緊急寄稿】第1回 最新の人口動向(修正版)
本年7月26日に総務省から、「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」にもとづいて1月1日時点の人口等が公表された。
筆者は、昨年10月にこのコラムで「東京にとって2022年は歴史的な年として記憶される?」と題して、東京都の人口減少を取り上げていることから、その続編として上記の人口データにもとづいて、近年の全国、首都圏、そして東急線沿線の人口動向について、数回にわたって考察してみたい。
1回目の本稿では、全国および首都圏に着目し、解説を試みる。
・2022年に首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の人口が減少したが、2023年には持ち直す様相をみせている。これは、外国人住民※2の反転急増による。
■47都道府県で日本人人口が減少、外国人住民は2022年から反転増加
2023年1月1日の人口動態で特筆すべき点は、2点ある。
そのひとつは、日本人の人口が47都道府県の全てで前年より減少している点である。
東京都の日本人の人口が減少となった2022年時点で、47都道府県の中で唯一人口増が続いていた沖縄県においても、2023年になって減少に転じている(図表1)。
日本人の少子化のみならず、後期高齢者に入り始めた“団塊の世代”とそれ以前の世代のいわゆる“多死化”もあって、全国的に日本人の人口減少は加速する様相を見せている。
【図表1】日本人の2013~2023年の人口推移 ※1
もうひとつの特筆すべき点は、新型コロナ感染症拡大(以下、「新型コロナ禍」と称する)以後の2021~2022年※2に減少していた外国人住民※3が、2023年に入って反転して急増している点である(図表2)。
このように日本人の減少、外国人住民の増加の結果、2023年時点で総人口に占める外国人住民の比率は2013年の1.54%から2.39%と、1.5倍となっている。
【図表2】日本人と外国人住民の2013~2023年の人口推移 ※1
■1都3県の人口全体において存在感が増す外国人住民
次に、1都3県(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)の総人口(日本人+外国人住民)について見てみる。
2022年には前年比で人口が減少した1都3県であるが、2023年には増加に転じ、2021年の水準に戻りつつある(図表3)。
ただし、その増加分は新型コロナ禍の2021~2022年※4に減少した外国人住民数の反転増加によるところが大きく、1都3県のいずれにおいても日本人の人口は減少している(図表4)。
【図表3】1都3県における2013~2023年の総人口(日本人+外国人)の推移 ※1
【図表4】1都3県における日本人と外国人住民の2013~2023年の人口推移 ※1
なお、都県別に総人口の推移を見ると(図表5)、2022年に人口が減少した東京都は2023年に再び増加に戻っている一方で、他の3県の総人口は2021年以降微減傾向が続いている。
【図表5】1都3県別の2013~2023年の総人口(日本人+外国人住民)の推移 ※1
次に、東京都を除く首都圏の3県(埼玉県、千葉県、神奈川県)を個別に見ることにする。
埼玉県や千葉県では、日本人は2018~2021年にかけて横這いであるが、2022年以降には減少している。特に、2022~2023年の減少はそれまでの傾向と比して大きい。
これに対して外国人住民は、両県とも2020~2022年に横ばいや微減の時期があったものの、2013年以降は概ね増加となっている(図表6)。
【図表6】埼玉県・千葉県における日本人と外国人住民の2013~2023年の人口推移 ※1
神奈川県では、日本人は2013~2021年にかけて増加していたが、2022年以降では減少に転じている。
外国人住民について見ると、2013~2020年まで急増した後、2020~2022年に減少したが2023年には大きく増加に転じた(図表7)。
【図表7】神奈川県における日本人と外国人住民の2013~2023年の人口推移 ※1
以上から分かる通り、市場環境の重要な指標の一つである「人口」においては、絶対数では日本人と比べて桁違いに小さいものの、徐々に外国人住民の存在感が増しているといえる。
次回の稿では、特に東京都について詳しく見ることにする。
※1 図表はいずれも、「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(総務省)にもとづき、東急総合研究所が作成
※2 「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」に基づく人口等は、各年の1月1日時点のものである。なお、日本での新型コロナ感染症(COVID-19)の拡大(略称、「新型コロナ禍」)は1月以降と言われており、住民基本台帳上の人口における「2020年(1月1日時点)」は、新型コロナ禍直前を示すものと考えられる。
※3 資料の原典である総務省公表の「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」の表記の通り。この「外国人住民」は住民票を有する外国人(個人番号の通知対象)であり、観光やビジネスを目的とする短期滞在は含まない。
なお、図中では記述を簡素化するために「外国人」と記している。