2016年度

9.企業価値向上における理念マネジメント

主任研究員 野崎 由香理

(1)研究の目的・背景
日本企業の雇用慣行(終身雇用・年功序列)の変化と雇用形態の多様化は、企業に勤めるビジネスパーソンの成員性(メンバーシップ)に大きな影響を与えている。
組織成員性、いわゆる企業への帰属意識は従来、「組織に参加する」のは欧米的であるのに対して、「組織に所属する」のが日本的であるともいわれてきた。しかし雇用慣行の変化は、個人の企業に対する依存度を低下させると同時に、組織成員性の重視度の低下を招いている。
さらに企業の海外進出や多様な価値観から生み出されるイノベーションへの期待から、雇用形態の多様化(ダイバーシティ)は必然的に増大する見込みである。多様な属性や価値観をもった組織メンバーとともに職務を遂行するには、お互いの差異を認め、尊重し合うと同時に、職務パフォーマンスを高めるうえで、ある場面ではチームとしての共通基盤づくりも求められる。チームとしての共通基盤においてもっとも優先される概念が、企業組織の掲げる価値観すなわち経営理念である。
このように人材の多様化における企業価値向上が推進されるなかで、組織が掲げる価値観を組織メンバーが受け容れ行動に反映する仕組みとして「理念マネジメント」が注目されている。
本調査研究の目的は、理念マネジメントが企業の経営成果に及ぼす影響を明らかにすることである。

(2)研究テーマ
理念マネジメントに関する3つの問いを明らかにしたうえで、経営理念が企業経営に貢献する浸透次元を特定し、具体的に取り組むべき施策を考察・提言した。
①理念マネジメントは、どのようにして行われるのか
②理念マネジメントは、企業経営にどのように貢献するのか
③経営理念が浸透している職場は、どのようにして生み出されるのか

(3)研究概要
①調査手法
1)事例調査(文献調査及び担当者インタビュー)
2)アンケート調査
②調査実施期間
1)2016年7月~9月
2)2016年10月~12月
③調査対象
1)理念マネジメントの取り組みがよく知られている企業をはじめ、優れた経営事例として公式に表彰されている企業及び担当者
2)自社の経営理念を認知しているビジネスパーソン(公務員、自営業、会社社長・役員を除く)