2019年度

6.緑化による都市価値向上の研究(花と緑の経済効果)

1.研究の目的・背景
 今日の生活者は、地球温暖化、生物多様性の喪失、少子高齢化・人口減少などの社会・環境的課題に直面し、特に、都市部においては、身近な生き物の保全、地震等に対する防災・減災対策、ヒートアイランド対策、良好な景観の形成、ゆとりと潤いのあるライフスタイルの実現などの諸課題に対応した、持続可能な街づくりが求められている。
 東急グループにおいては早くから東急線沿線における「緑のプレゼント」「みど*リンク」など他社に先駆けた取り組み施策を展開してきたが、今後も緑をつくり、まもり、育てる都市緑化活動をビジネス面からのアプローチで中長期的な研究に取り組むことを目指すべきであると思料し、その活動論拠となる「緑化による都市価値向上」の基礎研究を企画するに至った。

2.研究テーマ
 都市緑化という研究テーマは、都市計画系アプローチはもとより植物学、造園学、生態学、環境経済学、地域コミュニケーション学など広範な学術分野に論点が拡散するため、今回は突破口としての単年度研究という制約下において、東急および東急グループの政策起案に資すべく、ビジネス上の具体的な施策例の抽出に論点を絞った。
 まずイントロダクションとして、都市緑化の学術的論考は、東京都市大学総合研究所・未来都市研究機構グリーンインフラユニット長の飯島健太郎教授のご助言を得て俯瞰的な課題整理をおこなった。次に緑化投資に係る会計的な特徴を分析し、償却後残価が実態価値を上回る一方で、一般的な建築や設備投資と比較してイニシャルコストに対するランニングコストの比率が著しく大きいことを確認した。緑化の経済効果は情緒的価値(⇔機能的価値)を含めて複層的(環境改善効果、健康増進効果、集客効果等)であり、故に包括的な評価尺度が欠如している。
 以上の観点から今回のテーマは、都市緑化による集客効果とし、対象地域は東急線沿線に絞り込んで施策案の抽出を進めた。

3.調査概要
(1)文献調査
(2)インタビュー調査(学識経験者、緑化専門家、事業関係者)
(3)全国寺社活動状況推計調査(DO THE SAMURAI社DB活用)
(4)全国訪日外国人SNSコメント分析調査(ナイトレイ社DB活用)

4.研究担当者
プロジェクト・リーダー :山内 智孝
プロジェクト・メンバー :若本 一三、永瀬 巌
監修者         :山内 智孝